修士論文一覧

List of Master Thesis

最終更新日 2023年2月21日
作成日 2007年2月27日



2022 (令和4) 年度
會澤 和希
Aizawa Kazuki
近似ベイズ計算法による非定常性をもつパラメータの推定 (和文要旨
Estimation of unsteadiness in model parameters with approximate Bayesian computation (Abstract)
【論文概要】
本論文では,発展方程式のパラメータが非定常性をもつ場合に近似ベイズ計算法を適用するための手法を提案している.時系列データの無次元化と測定誤差の前処理による閾値の決定法を提示するとともに時系列データから連続したデータ点を抽出し,それを時刻ごとに移動させることで,パラメータのもつ非定常性を推定する方法を提案した. そして,卓球ボールの軌道データを用いて運動方程式に含まれる空力係数の時間変化を推定し,他の方法の結果と比較することで本手法の有効性を示した.
審査会用preprint(pdf 473 KB)

杉浦 郁斗
Sugiura Ikuto
飛翔軌道を用いた細長形状物体の空力解析 (和文要旨
Aerodynamic Analysis of Elongated Shape Body with Flight Trajectory (Abstract)
【論文概要】
本論文では,空間曲線の微分幾何学を力学と関連付けることで局所的幾何学量と運動方程式に含まれる流体力に関する力学量の関係を定式化している. これにより空間曲線上の位置データから物体に作用する流体力の推定を可能にしている. そして,この定式化を卓球ボールとやり投げのヤリに対して得られた飛翔軌道に応用することで飛翔時のボールやヤリに働く流体力の評価を試みている. 特に,ヤリの解析例では飛翔時の迎え角と流体力の関係を検証し,ヤリの姿勢によって前縁剥離による失速が発生しうる可能性を示唆する結果を得ている.
審査会用preprint(pdf 308 KB)

2021 (令和3) 年度
桧山 莉央
Hiyama Rio
野球ボール型加速度センサの出力シミュレータの開発 (和文要旨
Development of output simulator for baseball-type accelerometer (Abstract)
【論文概要】
本論文では,4個の加速度センサから成る野球ボール型センサの出力解析を目的に各センサの配置を剛体と考えることで飛翔時の出力を再現するシミュレータの開発を行っている.このシミュレータによって飛翔実験のデータから自転軸の変化や重心に働く流体力の導出を可能にした.
審査会用preprint(pdf 473 KB)

森村 和馬
Morimura Kazuma
軌道の幾何学量を用いた空力推定法のスポーツ弾道学への応用 (和文要旨
Application of Aerodynamic Force Estimation Method using Geometry of Trajectory to Sports Ballistics (Abstract)
【論文概要】
本論文では,空間曲線の微分幾何学を力学と関連付けることで局所的幾何学量と運動方程式に含まれる流体力の間の関係を定式化している.これにより空間曲線上の位置データから想定される流体力を推定することを可能にした.そして,この定式化をスポーツで得られた飛翔軌道に応用することで飛翔時のボールに働く流体力,特にその非定常特性の解明を試みている.
審査会用preprint(pdf 308 KB)

2019 (令和元) 年度
石塚 雅人
Ishitsuka Masato
軌道情報に基づく空力係数推定への近似ベイズ計算法の応用 (和文要旨
Application of approximate Bayesian computation to trajectory-based estimation of aerodynamic coefficients (Abstract)
【論文概要】
本論文では,飛翔軌道に基づく飛翔体の空力係数推定に近似ベイズ計算法を応用している.飛翔軌道データでは計測時の条件を完全に揃えることが困難であるため統計的な処理が有効である.近似ベイズ計算法で重要となる閾値と推定精度について確認するとともに軌道データから算出する初速度の影響も検証している.また,空力係数を時間の1次関数で近似して軌道に沿う変化を捕える方法も提案している.そのうえで,卓球ボールのデータを用いて飛翔時の空力係数を推定し,軌道補間による先行研究の結果と比較することで近似ベイズ計算法による推定の特徴を明らかにした.
審査会用preprint(pdf 473 KB)

宍戸 祐輝
Shishito Yuki
流体方程式の計算法への現代制御理論の応用 (和文要旨
CFD Analysis on flows around a sphere with flight trajectory data (Abstract)
【論文概要】
本論文では, 非圧縮性流体の基礎方程式と状態空間法の状態方程式との間の形式的対応に着目して,現代制御理論に基づいて流体方程式の計算法を構成することを試みている.連続の式を出力方程式と考え,その誤差を最小化するという観点から最適制御の枠組みが導入される.非圧縮性粘性流体の方程式に対する極限方程式であるストークス方程式とオイラー方程式を考察し,それぞれに対する可制御性を検証している.前者は不可制御であり,このことから初期速度場における非圧縮性の要請を示した.後者は可制御であることから最適制御に沿った非圧縮性条件の構成法が示された.
審査会用preprint(pdf 308 KB)

菅谷 学人
Sugaya Norihito
飛翔軌道データを用いた球まわりの気流のCFD解析 (和文要旨
CFD Analysis on flows around a sphere with flight trajectory data (Abstract)
【論文概要】
本論文では,球まわりの気流とそれによって発生する流体力を明らかにするために数値流体力学(CFD)による解析を行っている. 解析の妥当性を確認するために風洞実験と同じ高レイノルズ数流れの条件下で,抵抗急減現象と回転球における負のアグヌス効果が再現されている. そして,加速度運動する球の例として卓球ボールの飛翔軌道を用いて,球まわりの気流と流体力を解析している. 特に,球の加速度の大きさと向きの変化に対して4通りの条件下で解析を行い,それぞれの特徴を調べている.その結果,球の減速運動に伴って抵抗係数が変化することを明らかにした.
審査会用preprint(pdf 450 KB)

長岡 大志
Nagaoka Hiroyuki
加速度センサを内蔵したボールの回転特性の実験的検証 (和文要旨
Experimental Verification of Rotational Property for a Ball by using embedded Acceleration Sensors (Abstract)
【論文概要】
本論文では,4個の加速度センサから成るボール型センサを用いて飛翔状態でのボールの回転特性を計測する手法が提案されている.各センサ出力をボールの回転運動と重心の並進運動の成分に分離し,それぞれの成分から角速度と回転軸を算出している.同時にボールの回転運動のシミュレーションを行い,センサ出力と比較することで,得られた結果の妥当性を検証している.
審査会用preprint(pdf 414 KB)

三浦 拓海
Miura Takumi
係数推定のための飛翔軌道の3次元画像計測(和文要旨
Three-dimensional image measurement of flight trajectories for Estimating drag coefficient (Abstract)
【論文概要】
本論文では,安価な民生用デジタルビデオカメラを用いたステレオ計測とOpenCVを利用した画像処理によりスポーツ用のボールの飛翔軌道の計測を行っている.特に飛翔状態でのボールの抵抗係数を推定することを目的として計測に伴う誤差評価を行い,ステレオ計測に伴う奥行き方向の誤差が抵抗係数の評価に重大な影響を及ぼすことを明らかにした.
審査会用preprint(pdf 548 KB)

2018 (平成30) 年度
荻野 尚哉
Ogino Naoya
加速度センサを用いたボールの回転特性の動的計測 (和文要旨
Dynamic Measurement of Rotational Property of a Baseball with Acceleration Sensors (Abstract)
【論文概要】
本論文では,ボール内に埋め込まれた4個の加速度センサの出力を利用して 飛翔中のボールの回転特性を計測する手法が提案されている. センサ出力をボールの回転による成分と重心の並進運動の成分に分離し, それぞれの成分から角速度と回転軸を算出している. そして,これらの結果とセンサのもつノイズ幅を比較検討することで提案手法の有効性を確認している.
審査会用preprint(pdf 535 KB)

2017 (平成29) 年度
荒木田 祐希
Arakida Yuki
加速運動する2次元円柱まわりの気流のCFD解析 (和文要旨
CFD Analysis on flow around a two-dimensional circular cylinder in accelerating motion (Abstract)
【論文概要】
飛翔中のボールのように加減速のある並進運動と回転運動をともなう物体の空気力学, 特にその際に発生する非定常流体力はいまだ十分に解明されていない. 本論文では計算流体力学の手法を用いて平面内を加速運動する円柱まわりの気流を再現することで, 円柱に働く流体力の解析を行っている. 同時に,円柱の回転が流体力に及ぼす影響についても考察し, サッカーボールの飛翔実験で得られた空力係数のレイノルズ数依存性に関する結果に対して 定性的な説明を与えることに成功している.
審査会用preprint(pdf 442 KB)

2016 (平成28) 年度
渡辺 卓馬
WATANABE Takuma
軌道に基づく空力係数推定法における誤差解析 (和文要旨
Error analysis in method based on trajectory for estimating aerodynamic coefficients (Abstract)
【論文概要】
飛翔中のボールに働く流体力の非定常性を調べるために飛翔中のボール軌道から空力係数を求める方法が提案されているが, 軌道データや条件によっては得られた係数値が不自然となることが知られていた. 本論文では,データに含まれる測定誤差と補間する際の打切り誤差を考慮することで,この方法がもつ誤差の解析を行っている. そして,相対誤差に最小値が存在することを示すとともに,その条件下で実際に空力係数値が正しく求まることを実測データに基づいて検証している.
審査会用preprint(pdf 421 KB)

2014 (平成26) 年度
杉山  剛史
SUGIYAMA Tsuyoshi
ボール軌道の局所的特徴量を用いた空力係数の推定 (和文要旨
Estimation of Aerodynamic Coefficients by using Local Characteristics of Ball Trajectory (Abstract)
【論文概要】
飛翔するボールは一般に推進力をもたないため,風洞による実験では必ずしも現実の飛翔条件が再現されない. そこで本論文では飛翔中のボール軌道の3次元位置データから空力係数や回転軸などの空力特性を求める方法を提案し, ゴルフボールを使って測定された軌道データの解析を行っている. 特に提案した方法では軌道が空間曲線であることから軌道の曲率や捩率といった局所的特徴量を用いることで 時々刻々と変化するボールの空力特性を評価することが可能である. そして,この方法でゴルフボールの実測軌道データを解析し, その空力係数の非定常性と3次元性をとらえることに成功している.
審査会用preprint(pdf 543 KB)

2013 (平成25) 年度
安田  海人
YASUDA Kaito
軌道の特徴量を用いたボールの空力係数の推定 (和文要旨
Estimation of aerodynamic coefficients for a ball by using characteristics of trajectory (Abstract)
【論文概要】
飛翔するボールは一般に推進力をもたないため,風洞による実験では必ずしも現実の飛翔条件が再現されない. そこで本論文では飛翔中のボール軌道の位置データから空力係数を求める方法を提案し, 実際に軌道データの解析を行っている.提案した方法は大きく2種類に分類できる. ひとつは飛距離や最大高さなど軌道の大域的形状を表す量に基づく方法であり, 他方では曲率や捩率といった軌道の局所的特徴量を用いる. この方法は数学的には投射問題に対する逆問題となるので前者の方法を用いて解の一意性が検証される. さらに後者の方法で卓球とサッカーボールの軌道データを解析し, それらの空力係数の非定常な変化をとらえることに成功している.
審査会用preprint(pdf 422 KB)

2012 (平成24) 年度
中村  翔吾
NAKAMURA Shogo
サッカー競技のオブジェクト指向シミュレータの開発 (和文要旨
Development of object-oriented simulator for soccer-play (Abstract)
【論文概要】
 本論文では,サッカー競技の競技シミュレータについて詳述している.サッカー競技のもつ自律性と分散性を表現するためにオブジェクト指向モデリングを用いて本シミュレータを開発している.特に,選手の視覚情報をモデル化することで競技中の選手がもつ視野の効果をシミュレータに導入している.個々の選手やチーム全体としてのパラメータである走力,視野角,判断の速さなどを体系的に変えた試合を再現することで,これらの効果が競技に及ぼす影響を明らかにしている.また,サッカー競技で使われている代表的なフォーメーション間での試合を再現することでフォーメーションの歴史的発展の経緯も確認している.このように多くの検証例を示すことでシミュレータの妥当性を実証的に示している.
審査会用preprint(pdf 382 KB)

陳  偉明
CHEN Weiming 
3変数投射モデルの最適投射角 (和文要旨
Optimum projection angle in three-variables projection model (Abstract)
【論文概要】
 本論文はスポーツ競技等で見られる放物運動を念頭に,その最適角を決める力学的要因である高低差,助走ならびに空気抵抗の効果について考察されている.これらの効果を含む最も簡単な力学モデルである3変数投射モデルを無次元化して扱うことにより,一般的な投射問題に対して有効な結果が得られている.空気抵抗の働かない場合については,飛距離に対する極値問題から最適投射角を理論的に導出しており,その結果から高低差と助走の効果が最適角に及ぼす効果を簡潔に示している.また,空気抵抗については理論的な展開が困難なことから数値解を用いて最適角を求めることで,その効果を明らかにしている.特に,助走を伴う投げ上げの際には空気抵抗の効果によって鉛直方向よりやや後方に投げる必要があることを示している.ここで示された結果は放物運動一般に関して基礎的な知見を与えるものと考えられる.
審査会用preprint(pdf 373 KB)

2011 (
平成23) 年度
有木  一司
ARIKI Kazushi
セルオートマトンモデルによる抜け道効果の検証(和文要旨
Verification of by-path effect with cellular automaton model (Abstract)
【論文概要】
 本論文では市街地を想定した道路網での交通流の基本的特性をシミュレーションによって明らかにしている.特に,本線の抜け道を利用するべき条件やその効果についての考察がなされている.シミュレーション手法には交通流の微視的モデルであるセルオートマトンが使われているが,その際に流入条件を決めるポアソン到着の問題点とその改善法も述べられる.そして,通常のポアソン到着を使用した場合との効果の違いについても検証されている.さらに,到着間隔の期待値,スロースタート効果および信号の停止時間等を変化させることでパラメータ・スタディを行い,さまざまな条件下での抜け道への最適な分岐率を明らかにしている.そして,その結果から抜け道の利用が有効になる条件やその効果について言及している.
審査会用preprint(pdf 309 KB)

浦田  勝行
URATA Katsuyuki 
交通方程式へのTVD差分法の応用(和文要旨
Application of TVD difference method to traffic equation (Abstract)
【論文概要】
 本論文では交通流の巨視的モデルである交通方程式に対する数値計算手法が検証されている.交通方程式は車両の密度に対する偏微分方程式であり,通常は離散解法として有限差分法が利用される.しかしながら,渋滞や信号などによる交通流の分断によって車両密度に不連続が発生するため,通常の差分スキームでは数値粘性や数値振動によって解の精度が著しく劣化する.そこでTV安定性の概念を用いて,不連続での数値振動が本質的に発生しないTVD差分スキームを構成している.そして,このスキームを非粘性Burgers方程式と交通方程式に適用することで,その効果を検証している.特に代表的な5種類の流束制限関数による密度波の時間発展と保存量の精度を比較し,交通方程式に適した制限関数を明らかにしている.
審査会用preprint(pdf 244 KB)

鈴木  悠太
SUZUKI Yuta 
野球の非回転球における空気力の影響(和文要旨
The effect of aerodynamic forces to non-spinning ball in baseball (Abstract)
【論文概要】
 本論文では野球競技で使用される変化球のうち,特にボールの回転が少ない非回転球と呼ばれる球種を力学的な観点から考察している.空気力の働く質点の運動方程式を導き,それを無次元化することでボール軌道に関する一般的な議論を行っている.その結果としてボール軌道は揚力の影響を強く受けることを見出した.この結果を踏まえ,野球ボールに働く空気力としてホワイトノイズや正弦波を仮定したシミュレーションによりボール軌道を求め,それらを比較することで非回転球の力学的特徴を検証している.非回転球の変化の本質は,ボールの回転が少ないために生じる長い周期での空気力の変化であり,その結果としてボールを握る位置など投球時のわずかな差異が打者の位置で軌道の大きな変化となって現れることを指摘している.
審査会用preprint(pdf 256 KB)

2010 (
平成22) 年度
小長谷 康明
KONAGAYA Yasuaki
スポーツにおける投射問題への3自由度モデルの応用(和文要旨)
Application of Three Degrees of Freedom Model to Projectile Problems in Sports (Abstract)
【論文概要】
 本論文はスポーツ競技等で見られる放物運動の最適投射角について考察されている.このような投射運動は単純な放物運動とは異なり,投射時に助走の効果が現れる.この効果を含んだ3自由度投射モデルによって最適投射角が理論的に求まるが,この解を実測データと比較するためにはモデル変数を特定する必要がある.そこで,3自由度モデルから初速度と初速角の関数関係を導き,実測値から得られた関数形と比較することでモデル変数を評価する方法を提案している.そして,砲丸投げと走り幅跳びの実測データにこの方法を適用することで,それぞれの競技における最適角を検証している.提案された方法によって競技データに対する力学的裏づけを与えることが可能となり,スポーツ競技の今後の発展に寄与するものと判断できる.
審査会用preprint(pdf 183 KB)

齋藤 将弘
SAITOH Masamitsu 
流体計算へのMPS法の応用(和文要旨)
Application of MPS Method to Fluid Flow Computations (Abstract)
【論文概要】
 本論文では,連続体の運動を有限な大きさの粒子群の運動として近似する粒子法と呼ばれる数値解析手法を考察している.粒子法の代表であるMPS(Moving Particle Simulation)法をいくつかの流体問題に適用し,その特徴を明らかにすると同時に粒子法に適した問題を検討している.非粘性Burgers方程式やEuler方程式による計算結果から,この手法が解の不連続を精度よく表わせる半面,物理量の保存特性に問題があることを指摘している.また,非圧縮性Navier-Stokes方程式を用いた結果からは圧力場の計算に困難があり,このことから内部流問題より外部流問題が精度の良い計算が可能であることも明らかにしている.そして,これらの結果から送電線への着氷問題を取り上げ,着氷形状の経時変化の再現を試みている.
審査会用preprint(unavailable

2009 (
平成21) 年度
楊 国玉
Yang Guoyu
ニューロンのオブジェクト指向モデリング(和文要旨
Object-oriented Modeling of Neuron (Abstract)
【論文概要】
 生物の神経系を構成するニューロンは本来自律的に活動している.神経系の情報処理機構を模倣したニューラル・ネットワークにおいて同様の性質を実現するためには各ニューロンは分散並列的な処理を行う必要がある.
 本論文では,オブジェクト指向モデリングに基づいてニューロンに対するオブジェクト指向表現を与えている.具体的には,ニューロン機能を表現した数学モデルである細胞膜の等価電気回路モデルとHodgkin‐Huxleyモデルに対してそれらのオブジェクト指向モデルを提案した.さらに,これらのモデルに関する例題を通して今回設計したオブジェクト指向モデルによってニューロン機能が再現できることも確認している.
本研究はソフトウェアによるニューラル・ネットワークの分散並列化の試みと考えることができ,今回設計したニューロン・オブジェクトは分散並列環境下でのニューラル・ネットワーク構築の基礎を与えるものと期待できる.
審査会用preprint(unavailable

李 菁
Li Jing
非粘性バーガース方程式の数理的解析(和文要旨
Mathematical analysis of invisid Burgers equation (Abstract)
【論文概要】
 非粘性バーガース方程式に代表される非線形偏微分方程式の解を具体的に求めることはいまだに難しい問題である.特に,初期値が連続関数であっても有限な時間内に不連続(衝撃波)が発生する場合,数値的振動を含まない正確な数値解を求めることは容易ではない.
 このような背景から,本論文は非粘性バーガース方程式の初期値問題を数学的観点から詳しく調べている.初期値問題の解は,連続性が保証される古典解と不連続を含む弱解に分けて考える必要がある.古典解に対して数値解を求めることは容易であり,実際に2次精度の差分スキームを用いることで高精度な数値解が得られることを示した.また,弱解に関しては有限な保存量をもつ初期値問題に対して時間方向の漸近解であるN形波を解析的に求めると同時に,弱解がN形波と見なしうる時間の程度を数値解との比較により明らかにしている.
審査会用preprint(unavailable

2007 (平成19) 年度
笹島 健司
SASAJIMA Kenji
現代制御理論に基づく非圧縮性流れの新しい計算法(和文要旨
A New Computational Method for Incompressible Flow Based on Modern Control Theory (Abstract)
【論文概要】
 非圧縮性流れの数値計算において正確な圧力場の決定は容易ではなく,特に物理的に意味のある境界条件はいまだに明らかになっていない.本論文では,対流項が回転形で書かれた非圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式が動的システムの状態方程式と形式的に同じ形であることに着目して,非圧縮性流れの計算法に現代制御理論の考えを導入することを試みている.
 この枠組みでは,連続の式を出力方程式に対応させることで非圧縮性の条件に関する誤差最小化という最適化手法に基づいて圧力場が決定される.この計算法では,圧力場に関する境界条件が不要となる点が興味深い.論文後半では,平面Poiseuille流れ問題や2次元正方cavity問題などの定常・非定常計算による結果が示され,提案した手法の有効性が検証されている.
審査会用preprint(pdf 157 KB )

2005 (平成17) 年度
大塩 晃之
OHSHIO Teruyuki
TVD差分法による交通方程式の計算(和文要旨)
(Abstract)
【論文概要】
 信号を含む単路部上での交通流を流体モデルで予測するための基礎的な研究を行っている.赤信号で停車している車列が青信号で流れ出す状況(渋滞解消シミュレーション)を想定し,密度分布による車列の時間変化の精度を検証している.
この問題では,密度分布に不連続を含むため,使用する差分スキームに特別な配慮が必要となる.同じ問題を扱ったこれまでの差分スキームに再検討を加え,保存形で書かれた1次精度の差分スキームが適していることを明らかにしている.
さらに,高次精度の差分スキームとして2次精度Lax-Wendroff法をTVD化することを試み,その結果を1次精度upwindスキームと比較している.その結果,密度分布に若干の高精度化は見られるが,おおむね同じ結果が得られた.つまり,渋滞解消シミュレーションでは使用するスキームを高精度化する必要はないことが示唆されている.
審査会用preprint(unavailable

小林 伊織
KOBAYASHI Iori
領域オブジェクトの分散化と非同期並列計算(和文要旨)
(Abstract)
【論文概要】
 本論文では,科学技術計算分野へのオブジェクト指向技術の応用として数値流体力学を例にした分散並列計算システムの構築を試みている.偏微分方程式に対する領域分割解法をオブジェクト化した領域オブジェクトを用いて,特に,その分散化と非同期並列計算に主眼を置いている.
既存の領域オブジェクトがJava言語で実装された経緯からその分散化にRMIを使用しており,領域オブジェクト間での直接通信が行えなかった.そこで,本論文では分散オブジェクト環境としてHORBを採用することで,領域オブジェクト間での直接通信を可能としている.また,定常問題に対する可変時間刻みの概念を領域オブジェクトに導入することで,非同期並列計算を実現し計算効率の向上を果たした.同時に,分散化した領域オブジェクトによる非同期並列計算において,時間刻みの変動が解の収束に大きな影響をもつことを明らかにした.
審査会用preprint(unavailable

2004 (平成16) 年度
富沢 哲朗
TOMIZAWA Tetsuro
市街地交通シミュレーションへの粉体流モデルの応用(和文要旨)
(Abstract)
【論文概要】
 本論文では,市街地の交通流シミュレーションを高精度化する方法として,高速道での自然渋滞を再現できる1次元粉体流モデル(Kerner & Konhäuserモデル)を市街地交通流シミュレーションへ適用することを試みている.
市街地での交通では交通信号等により車両密度に不連続が発生するため,使用する差分スキームの選択に注意を要する.ここでは,市街地の交通状況を単純化した「渋滞解消問題」と「渋滞発生問題」を取り上げ,それぞれに対して1次精度upwind法,2次精度Lax-Wendroff法およびこれらから構成したTVD差分法を適用することで差分スキームの検証を行っている.その結果,「渋滞発生問題」では使用する差分スキームによる影響はほとんど見られないが,「渋滞解消問題」ではTVD差分法を使用する必要のあることが示された.さらに,KKモデルによる結果では単純な交通方程式による結果より渋滞解消時間が実測値に近いことが示された.
審査会用preprint(unavailable

2003 (平成15) 年度
鈴木 尊人
SUZUKI Takato
流体モデルによる交通流シミュレーションのためのオブジェクト指向モデリング(和文要旨)
(Abstract)
【論文概要】
 本論文では,偏微分方程式で表現される交通方程式を用いることで「領域オブジェクト」の概念を交通流シミュレーションに導入している.「領域オブジェクト」は偏微分方程式の領域分割解法をオブジェクト指向モデリングの観点から再構成した概念であり,複雑な形状をした計算領域内での数値シミュレーションを効率化できる.本論文では,この概念を「Roadオブジェクト」として表現し,これを組み合わせることで大域的な道路交通網の構築を試みている.
第1章では研究背景として道路交通情報の現状および今後の発展に触れるとともに効率的な交通流シミュレーション手法を開発することの意義が述べられ,続く第2章で本研究で必要となるオブジェクト指向方法論に関する説明が,特に機能指向方法論との対比において概説される.第3章では,流体モデルの基礎方程式である交通方程式が紹介され,市街地でのシミュレーションで必要となる渋滞境界条件がこの方程式の特別な場合として導出される.さらに,交通容量と補正率を用いることで一般道に対する速度密度関数が第4章で提案される.この交通方程式と速度密度関数が「Roadオブジェクト」の基本的な機能を実現する.「Roadオブジェクト」に基づいた大域的道路交通網を構築するため,統一モデリング言語(UML)にしたがった階層的なクラス設計が第5章で与えられ,このモデルを用いた日立市内の道路交通シミュレーションの結果が第6章に示される.特に,入力データを関係諸機関や交通量の実測から入手することで,より現実的なシミュレーションを行い,その結果から日立市の道路状況に関する考察が加えている.第7章では交通流のオブジェクト指向モデリングの意義を総括するとともに今後の展開についても言及している.
審査会用preprint(pdf 138 KB )

2002 (平成14) 年度
三石 智道
MITSUISHI Tomomichi
分散させた領域オブジェクトによる並列計算 (和文要旨
Parallel computation with distributed Domain-object (Abstract)
【論文概要】
 本論文は,領域分割法のオブジェクト指向表現である「領域オブジェクト」による分散並列環境の構築とその流体計算への応用について述べられている.特に,本研究では処理速度の向上とは異なる立場から並列計算をとらえ,その利点のひとつであるデータの分散化に注目した計算環境の構築を試みている.
第1章では研究背景として科学技術計算における大規模計算の問題点ならびにプログラムの並列化に関する問題点が指摘され,それらの解決策として領域オブジェクトによる分散並列計算の有効性が述べられる.すでに提案されている領域オブジェクトの概念を再検討し,分散並列化を考慮した新たな領域オブジェクトが第2章で設計される.実装に用いたJava言語とその標準APIであるRMI(Remote Method Invocation)についての説明とRMIによるオブジェクト分散環境の特徴が第3章でまとめられる.第4章では分散化した領域オブジェクトを用いた基礎的計算が行なわれ,格子サイズや粒度の影響,計算時間の予測式などが明らかにされる.さらに,第5章ではRMIによる環境で通信の並列化を行なう方法として非同期通信を考え,その有効性がいくつかの計算例によって示される.そして,第6章で総格子点数106規模の2次元キャビティー流れの計算が実行され,特に領域オブジェクトの配置による収束の影響などが調べられる.第7章では本研究の意義を総括するとともに今回構築した環境に対する課題にも言及している.
審査会用preprint(pdf 47 KB )

2001 (平成13) 年度
籠島 高
KAGOSHIMA Takashi
計算流体力学における領域オブジェクトの設計と応用 (和文要旨
Design and Application of Domain-objectin Computational Fluid Dynamics (Abstract)
【論文概要】
 本論文では,科学技術計算の一分野である計算流体力学にオブジェクト指向方法論を導入することによって汎用性のある丈夫な解析システムの構築を試みている.本研究では,領域分割法のオブジェクト化を通して「領域オブジェクト」の概念が導入される.さらに,この領域オブジェクトを抽象化することによって上記システムに対するフレームワーク(枠組み)が提示されている.
第1章では研究背景や計算流体力学におけるオブジェクト指向技術の現状に対する簡単な紹介とそれらの問題点が指摘される.また,本研究で必要となるオブジェクト指向方法論に関する説明が,特に機能指向方法論との対比において第2章で概説される.第3章では,本論文の基本概念である「領域オブジェクト」が導入される.複雑な形状の計算領域を単純な形状の部分領域に分割することで問題の複雑さを低減できる領域分割法と呼ばれる方法に着目し,この方法をオブジェクト化することにより自然にオブジェクト指向モデルが構成される.さらに第4章では,計算流体力学の計算手順をデータ構造やアルゴリズムの観点から再検討することで領域オブジェクトの抽象化が行われる.そして,第5章では抽象化された領域オブジェクトを中心概念とするフレームワークが示され,いくつかの例題を通してこのフレームワークの有効性が実証的に示される.第6章では本研究の意義を総括するとともに,ここで示した領域オブジェクトの今後の課題についても言及している.
審査会用preprint(pdf 215 KB)